行政不服審査制度改正のポイント その1

初めて行政書士らしいブログを書きます(笑)

 

先日「行政不服審査制度改革と行政書士業務」というタイトルの研修会に参加しましたので、そのアウトプットとして行政不服審査制度改正のポイントを書こうと思います。

 

行政不服審査制度改正の大本となっているのが、行政不服審査制度の一般法である行政不服審査法の改正です。この行政不服審査法は、昭和37年に制定されたもの。52年経って、ようやくの改正となります。

そして、行政不服審査法の改正に伴いまして、その関係法律約350本が改正されます。行政書士法の改正もその一環といえます。

改正の目的は、大きく分けて2つ。

行政不服審査制度の「公正性向上」と「利便性向上」です。

公正性向上のポイントは、①審理員による審理手続の導入②第三者機関(行政不服審査会)の設置③審査請求人・参加人の手続的権利の拡充で、利便性向上のポイントは④不服申立期間の延長⑤不服申立ての手続を「審査請求」に一元化⑥審理の迅速化⑦不服申立前置の縮小です。

 

①審理員による審理手続の導入について

現行法では審理において係争処分等に関与した職員が関わることを禁止していませんでした。

しかし、それでは処分側に有利な審理がなされる可能性が高く、公正な審理がなされないおそれがありました。

そこで、係争処分等に関与していない審理員による審理手続を導入し、公正性を高めることにしました。

②第三者機関(行政不服審査会)の設置について

審査庁の判断が妥当であるかチェックするために、第三者機関である行政不服審査会が審理に関与することとなりました。

③審査請求人・参加人の手続的権利の拡充について

行政事件というのは、行政機関側に証拠等が偏在していることが多く、審査請求人・参加人が適切な主張や証拠提出をするのが困難なものでした。

そこで、現行法では審理に提出された書類等の閲覧請求にとどまっていたのが、写し等の交付まで請求できることとされました。

④不服申立期間の延長について

現行法では「処分があったことを知った日の翌日から起算して60日」だった主観的請求期間(処分があったことを知ってから請求可能な期間)が新法では「3か月」に延長されました。これにより、以前よりも長い期間で不服申立てができ、利便性が向上します。

⑤不服申立ての手続を「審査請求」に一元化について

不服申立ての手続に関して、現行法では規定されていた、処分等をした行政庁に対する不服申立てである「異議申立て」を、新法は廃止し、処分庁以外に対してする不服申立てである「審査請求」に一元化しました。

現行法では、原則として上級行政庁が存在する場合は審査請求、上級行政庁が存在しない場合は異議申立てという振り分けがなされており、それだと上級行政庁の有無によって手続保障のレベルが左右されてしまいます(異議申立ての手続保障は審査請求よりも劣ります)。そのような不都合を解消し、手続保障を全体的に向上させるために、審査請求に一元化することにしたのです。

もっとも、審査請求人が簡素な手続を望む場合、処分庁に対する不服申立てである「再調査の請求」をすることも認めました。

⑥審理の迅速化について

行政事件というのは、何かとつけて時間がかかりやすいものです。

そこで、審査庁となる行政庁に対して審理期間の目安となる標準審理期間を設定するように努めさせ、標準審理期間を設定したならば公表しなければならないと規定しました。

また、計画的な審理手続についても規定されました。

⑦不服申立前置の縮小について

行政庁がした処分等に不服がある場合、行政機関に対して不服申立てをする行政不服審査制度と、司法に対して不服申立てをする行政訴訟提起という2種類の方法を採ることができます。そして、行政事件訴訟法8条1項本文によると、この2つの方法はどちらを採るか自由に選択できるのが原則です。

もっとも、同法8条1項ただし書によって、個別法により行政不服審査制度である審査請求に対する裁決を経た後でなければ行政訴訟を提起できない旨の定めがある場合は、行政庁に対する不服申立てをしなければ出訴できないという例外を設けてありました。かかる例外によって、ほとんどの場合において行政庁に対する不服申立てを経なければ出訴できないということになっていました。

かかる不服申立前置は国民の負担が大きく、また、憲法上保障されている国民の裁判を受ける権利を制約するものでした。

そこで、関係法規の改正によって、不服申立前置は縮小され、特に異議申立てと審査請求の二重前置はすべて廃止となりました。

 

このように、公正性、利便性が向上した行政不服審査制度でありますが、まだまだ課題はあるようです。

それは次回に。